ロシアでの出会いがなければ歌われていなかった「コシカ」。ヨーロッパでの出会いの積み重ねが一曲になった「ひとつしかない地球」。「ひとつしかない地球~The One annd Only Earth~」では、ヨーロッパ・ツアーで共演した各国のシンガーたち(プロフィールはこちら)がポルトガル語、ブルガリア語、ポーランド語、ロシア語でボーカルに参加しています。
このシングルが生まれた背景には「出会い」が大きく関わっています。2005年1月~2月、フランス、ブルガリア、ポーランド、ロシア、イギリス、日本の6カ国をまわったMIYAZAWA-SICKの航跡を以下にまとめました。
2月に行なわれるロシア・モスクワ公演のプロモーションのため、モスクワを訪問した宮沢和史。到着したその夜から現地の新聞、雑誌のインタビューが始まり、ラジオ、テレビ出演、記者会見、撮影などがひっきりなしに続くという、ロシア・メディアの宮沢への注目度の高さを知るモスクワ滞在になりました。2月のライブで共演するロシアのロックバンド、Night Snipersのボーカル、ディアナ・アルベニナとも今回何度も一緒に取材を受けました。
ディアナは2004年10月に来日、宮沢が出演した武道館でのイベントと滋賀・大津でのTHE BOOMのステージを観て、宮沢と会談しています。宮沢はこのモスクワ滞在中に彼らのライブを観て、その翌日にはNight Snipersの曲「コシカ」をディアナと一緒にレコーディングしました。宮沢は自身で訳した日本語詞で、ディアナはロシア語でというデュエット。このテイクは2月にロシアで限定発売されたNight Snipersと宮沢のスプリット・シングル『コシカ/島唄』に収録されています。そして、ここで「コシカ」という楽曲に出会ったことが、この『コシカ/ひとつしかない地球』のリリースへと繋がっていったのです。
ツアー“MIYAZAWA-SICK '05”最初の訪問地はフランス・パリ。1月28日、29日、パリの日本文化会館で開かれた2公演はチケット完売。パリ公演のゲストはフランス在住のブラジル人女性シンガー、CATIA(カチア)。CATIAはポルトガル語、ボサノヴァ・アレンジで「島唄」をリリースしています。昨年12月、東京で行なわれたCATIAのライブを宮沢が観に行き、パリでの共演を約束。今回のステージが実現しました。ライブ前日には、パリのスタジオで「ひとつしかない地球」を一緒にレコーディング。ライブのアンコールでもこの曲をポルトガル語と日本語でデュエットしました。
パリでのレコーディング
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ツアー2カ国目はブルガリア。1月前半に宮沢和史単独でブルガリアの首都ソフィアを訪れ、現地の人気テレビに多数出演し「島唄」を歌っていたこともあり、ブルガリアの新聞は“Japanese Music Star Returns to Sofia”と、その再訪を報じました。空港には1月に宮沢が訪問したソフィア第18高校の生徒たちが「島唄」の合唱で宮沢一行を出迎えるなど、ブルガリアの熱い歓迎ぶりは2月1日、バルカン半島最大のホールという国立文化宮殿でのライブにも、総立ちで大歓声という反応で表れました。
ブルガリアでのゲストは同国のロック第一世代(ビートルズと同時期から活動)、カリスマ的な存在のロックシンガー、Kiril Marichkov(キリル・マリチュコフ)。ソフィア市内のスタジオで行なわれた「ひとつしかない地球」のレコーディングでは、ブルガリア語と日本語での重厚感溢れるボーカルが記録されました。
ソフィアでのレコーディング
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2003年に首都ワルシャワでライブを行ない、東欧でもっとも「島唄」が歌われている国ポーランド。今回はプシェミシルとヴロツワフという2つの町での公演。ヨーロッパ・ツアーの中で唯一、首都ではない町でのライブでした。
2月4日、雪に覆われた人口7万人の小さな町プシェミシルでのコンサート会場は市の体育館。小学生の団体から若者、お年寄りまで年齢層は幅広く、ポーランド語でMIYAZAWAを歓迎する文章が描かれた手製の横断幕をかかげているグループもいます。ロック・コンサート自体がたぶん珍しい町で、MIYAZAWA-SICKは強い印象を残したはずです。
2月6日、ヴロツワフでのライブの当日午前、宮沢和史とトメックは、「ひとつしかない地球」のレコーディングを郊外のスタジオで行ないました。
トメック・マコビェツキはポーランド人なら誰もが知る22歳のロック・シンガー。1年半前のワルシャワで宮沢和史と知り合い、その後、ポーランド語でカバーした「島唄」を自分のバンドでレコーディングしています。「ひとつしかない地球」のレコーディングではトメックは宮沢が書いた日本語詞の一部をポーランド語に訳し、それを歌いました。
ヴロツワフでのライブ会場は約600席のホール。コンサートの序盤から立ち上がり、踊り始めた観客は「島唄」でついにステージ前に押し寄せ、アンコールを求める声は「シマウタ、シマウタ」の大合唱。トメック・マコビェツキとのデュエットで披露した新曲「ひとつしかない地球」、そして再度の「島唄」は熱狂的な歓声で迎えられました。
以下は、2月7日、ポーランド・ヴロツワフからワルシャワ経由でロシア・モスクワへ移動する宮沢和史へのヴロツワフ空港でのインタビューです。
―――ポーランドの感想を。
宮沢 今回まさかこんなに多くの人たちが集まってくれるとは思っていなかったね。しかも「島唄」を歌える人がプシェミシルでもヴロツワフでもこれだけたくさんいるとは。それと、みんなでアウシュビッツに行ったことによって、明らかに歌の内容や演奏が変わりましたね。俺の気持ちも以前とは違うし、「島唄」はもちろん、「ひとつしかない地球」も。歌というのは経験したあとには自分の中でも変わるんだなあということがわかりましたね。歌は不思議だなあって。
―――ポーランドではトメック・マコビェツキとレコーディングした新曲の「ひとつしかない地球」。こんな出会いの積み重ねによってつくられていく、大きな歌ですね。
宮沢 すごくシンプルな歌なんですけどね。シンプルがゆえにグッとくるんだよね、演奏していても。だんだん歌が成長していくのがわかるし。まさに歌ってるような、歌われていることも俺たちみんなで体験してるという不思議な気持ちだよね。歌にしたものをリアルタイムで感じながらヨーロッパの町をまわっています。
再びモスクワを訪れた宮沢。モスクワでの初公演はゴーリキ記念アカデミック芸術劇場という桟敷席が4階まであるホール、そして二日目がスタンディングのクラブという対称的な2会場でのモスクワ公演。両公演ともディアナ・アルベニナ率いるNight Snipersが共演しました。公演前日、スタジオで行なわれた彼らとのリハーサルに引き続き、ディアナの歌う「ひとつしかない地球」がレコーディングされました。出会ってから半年足らずでも、すっかり息の合っている二人。レコーディングもわずかな時間で終わりました。彼女の歌う美しいロシア語の響き、そして自ら訳したロシア語詞は、このシングルの聴きどころの一つです。
ライブではNight Snipersのステージ最後に宮沢が登場、ディアナと「コシカ」をデュエット。2日目のライブではアンコールを求める観客の声が地響きのように鳴りわたりました。
モスクワのライブ会場で2枚組シングル『コシカ/島唄』が限定数発売になりました。1枚目のディスクにはディアナが歌う「Симаута(島唄)」と宮沢和史「Cancion de la Isla(Shima Uta)」(ベスト盤『MIYAZAWA-SICK』に収録のバージョン)、CD-EXTRAにはモスクワで撮影された宮沢和史の写真を収録。2枚目のディスクは12月にレコーディングされたディアナと宮沢和史によるデュエット「コシカ」、CD-EXTRAに特典映像「MOSCOW STORY」(昨年12月に宮沢がモスクワを初めて訪れた時の映像やインタビュー)が収められています。
ロシアでのレコーディング
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ヨーロッパ・ツアーの最終公演ロンドン。ロンドン公演の主催は、昨年10月にヨーロッパで、宮沢和史ベストアルバム『TOKYO STORY』をリリースしたレーベルの主宰者であり、宮沢とも旧知の仲のポール・フィッシャー。
2月12日、キャパ約500の会場ICAは前売り券完売。客席は1曲目から会場をつんざく大歓声。日本人が7割以上、今回のヨーロッパ・ツアーでは一番の日本人率。そのほとんどを在英日本人が占めるのか、日本でのライブとも雰囲気が違う、うねるような盛り上がり。その盛り上がりに背を押されるように、ステージはどんどんヒート・アップしていきました。
アンコールは1997年にこのロンドンでレコーディングされた宮沢和史初のソロアルバム『Sixteenth Moon』の中から「My Heart, My Soul, My Fear」と「Save Yourself」が歌われました。
約3週間のヨーロッパツアーを終え、久々の東京へ帰り着いたMIYAZAWA-SICK一行。しかし、まだ旅は終わりではなく、大阪・東京での公演、そして「コシカ」と「ひとつしかない地球」のレコーディングを行ないました。このシングルのプロデュースを担当したのは東京事変などでも活躍している亀田誠治さん。昨年秋、武道館で行なわれた“ジョン・レノン・スーパーライブ”で、宮沢は亀田誠治さんのバンドで「Mother」「God」を歌い、その時期、ロシアから来日したディアナ・アルベニナはこのステージを武道館の客席から目撃しています。
ヨーロッパから東京に戻ってわずか3日後、まずは「コシカ」のレコーディングが行なわれました。この日はベースのtatsuが参加できず、代わって亀田さんがベーシストとしてレコーディングに参加しました。そして始まったレコーディングですが、最初のテイクが録音され、その素晴らしい出来映えにメンバー全員が満足。念のため、もう1テイク収録しましたが、結局最初のテイクがそのまま採用されました。
その翌日は「ひとつしかない地球」のレコーディング。この日はドラムのゲンタのスケジュールが埋まっており、ゲスト・ミュージシャンとして河村“カースケ”智康さんが参加。河村さんも亀田さんと同じく、昨年秋の武道館ライブで宮沢と共演しています。この曲はこれまで旅先で共演してくれたゲスト・ミュージシャンたちと共に歌い、レコーディングしてきた思い出深い曲。それだけにレコーディングは早く仕上がるだろうと推測していましたが、驚くべきことに今日も1stテイクでレコーディング終了。ヨーロッパ・ツアーを経たバンドの状態は、まさに最高潮。両曲とも、見事な出来映えのベーシック・トラックが完成しました。
その後の数日に行なわれた仕上げのためのレコーディングも、引き続きスムーズに行なわれました。美しい三線と二胡の調べ。ルイス・バジェの華麗なトランペットの響き。「コシカ」のサビ・パートの宮沢のボーカルはまさに圧巻。高野寛とクラウディア大城の見事なコーラス。心に染み入るヴォーカルが素晴らしい「ひとつしかない地球」。
そして最後に残ったのは、これまでツアー先の各国で収録してきた、カチア(フランス)、キリル・マリチュコフ(ブルガリア)、トメック・マコビエツキ(ポーランド)、ディアナ・アルベニナ(ロシア)の「ひとつしかない地球」のボーカルをミックスし、一つの曲に完成させる作業でした。そして生まれたのがこのシングルの3曲に収録されているもう一つのヴァージョン「ひとつしかない地球~The One and Only Earth~」なのです。